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車椅子とリード [イヌ・散歩]

“The international system in which we lived after the Cold War has ceased to exist, America has lost its hegemonic status, and the post-1945 world order is losing ground.”(Josep Borrell)




2024年5月8日(水)晴れ.連休後の仕事はとりわけきつい.職場から戻るとすぐ寝てしまうので,家族以外にはいろいろ書いている時間がない.手紙と日記が同時に回ればいいのだが,それは体力的に無理だ.


自転車で散歩にいっている途中で,車椅子を押している青年と出会うことが,これまで数度あった.彼はまだ30代と思われるが,自分で車椅子を押しながら,椅子の左側にダックスフンドのリードを引いている.犬を散歩に連れ出している途中なのだ.

彼はまだ若く力があるので,車椅子はぐんぐん進む.スピードは短足のダックスに負けない.犬にとってはいい散歩になっているだろう.あるときは,幼稚園帰りの彼の娘が途中から散歩に加わった.恥ずかしそうにしながらも,散歩の手助けをしていた.家庭の中が見えたようにおもった.

どうして車椅子生活になってしまったのかわからない(推測はできる)が,少しもめげた様子が見えず清々しくさえある.出会うたびに,その様子にいろいろと考えさせられる.



'Therefore the law is powerless, And justice never goes forth. For the wicked surround the righteous; Therefore perverse judgment proceeds. ' (Habakkuk 1:4, New KJV)




2024年5月6日,フランスとイギリスの駐露大使が,露外務省に呼び出されて,何事かを言い渡された:

“The response to Kiev's attacks on the Russian Federation using British weapons could be attacks on military targets in Britain and outside Ukraine,” the Russian Foreign Ministry said.

The Foreign Office called on Britain to “think about the catastrophic consequences of London's hostile steps and immediately refute Cameron's statements.”


プーチンは戦術核の演習を命じて,'catastrophic consequences'が何を意味するのかを,行動で示唆した.その後,英国主要メディア(インディペンデント紙およびガーディアンをのぞく)はこの大ニュースをほぼ無視したと現地の地政学アナリストが報告している:

'The announcement came days after Macron said he would “not rule out” the possibility of sending troops to Ukraine and Cameron said it was up to Kyiv how it used British weapons, including against targets inside of Russia.

The UK ambassador, Nigel Casey, and his French counterpart in Moscow were summoned by the Kremlin on Monday.

The Russian foreign ministry issued a formal protest to Casey over Cameron's recent statements that Ukraine had the right to use British weapons to strike inside Russia.' (Guardian, May 6 2024)

一方,この後,マクロンはどう反応したか?

'Macron stated this at a briefing with Chinese President Xi Jinping in Paris.

“We are not at war with Russia or the Russian people, and we have no desire for regime change in Moscow,” Macron said.'


これをきけば,笑うしかないが・・・笑った.実際は深刻で,笑い事ではない展開なのだが,時には笑いも必要なので,いつもけなしているミニ・ナポレオンにはちょっぴり感謝したい.

Borrellが言っているように,アメリカの時代は終わったのだ.親分が危なくなっているが,犬の方は大丈夫か? 主人が車椅子でもしっかりついく犬もいるのだが,それは彼が信頼に値し,つねにケアするからだ.そのリードは犬を助けるためのものであり,犬を主人に繋ぎ止めておくためのものではない.




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知られていない死 [イヌ・散歩]

2024年4月27日(土)晴れ.

夕方,公園に散歩にでる.今日からゴールデンウィークのせいか,週末にしては人の数はかなり少ない.嬉しそうな柴犬(飛び跳ねて歩いていた)や目を輝かせて胸はっているビーグルなど犬たちは元気そのものだったが,飼い主の方(特に若い飼い主)は元気がない様子.どこにも行けないものね.イヌはいなくても,月曜日(昭和の日)は出勤だ.


いまからちょうど2年前の今日は,17年近く飼っていたイヌが血を吐いた日だ.翌日,全身を震わせるようにして死んだ.萌え上がる力こぶのような新緑をみていると,時間がその日に回帰する.その日,病院からの帰り道に通りかかったとき,ぐったりと動かないイヌを両手に抱いて,もうここを歩くことはないだろうと思った.しかし,どのように記憶をたどっても,そのときの公園の緑の記憶がまったくない.


黄金週間には,天皇賞(春)が開催される.いまから16年前のGWには家族で九重高原に旅行していて,ラジオで天皇賞の放送を聴いた.京都競馬場の見えない馬たちが頭の中で走る.そのとき2着だったメイショウサムソンはいまはどうしているだろう,と急に気になる.

調べると,彼はもう21歳になっていて,種牡馬を引退し,NPO法人引退馬協会のフォスターホースとして,ひだか・ホース・フレンズに繋養されていた.皐月賞・ダービーや春秋の天皇賞など目覚ましい成績をあげて,ロンシャンに遠征さえした馬が行き着いた先は,そこだった.

いまは「引退馬協会を背負って立つ・・・広報部員の一頭として,なかなかフォスターペアレント(里親)会員を集めることができない知名度の低い馬たちの分もカバーしてくれることを期待」されている.では,「知名度の低い馬たち」は,どこにいったのか?


コロナ以降,予想されなかった状況で死んだり障害を負ったりする人々が増えている.ワクチン接種後,出勤してこない若い看護師(26歳)がいて,病院から連絡を受けた母親がいってみると,娘は身支度を整えてソファに座ったまま顔から血を流して死んでいた.彼女の死は地元の新聞に報道された:

「26歳看護師が,福岡県内の公立病院勤務だったことが判った.医療従事者から優先して始まったワクチン接種,もちろん強制ではないが同看護師はコロナ病棟勤務のため,3月19日に書類に同意した上で接種後,アナフィラキシーショックはなかったという.

経過観察では異常は見られなかったが,その後,23日の夜勤に出勤して来なかったため職場から家族に連絡があり,アパートで死亡した状態で発見され,死因はくも膜下出血と診断された.

同僚にとって突然の死は悲しくショッキングな出来事だったが,前述の厚労省の報告には看護師という職業が明記されない上,ワクチン接種の因果関係は評価できないとされていることから,不信感が広がっている様だ.」
(福岡県民新聞,2021年4月15日)

彼女の死は家族以外のものにも知られた.同年代の看護師の娘をもつ自分にとっては強烈なインパクトがあった.結局,やはりコロナ病棟で勤務することになった私の看護師の娘はワクチン接種に抵抗した.

一方,職を維持するために事実上強制されて接種し,因果関係不明で死んでしまった人も少なくない.若いアスリートが競技中にピッチで倒れて死ぬ.おかしなことが次々に起きている.これらの一部を,今頃申し訳程度に報道している主流メディアは,手を洗った現代のピラト以外の何だというのか? 彼らの黙認は,犠牲者の血によって歴史に刻まれたのだ.もう消し去ることはできない.その血が,永遠に告発を続けるだろう.


戦場では,ほぼ家族以外にしる者のない死も常態化している.砕けた子どもたちに取りすがるガザの母親.自撮りのカメラに向かって,砲撃によって仲間が死に絶えて残り2人になったことを告げる塹壕の若いウクライナ兵のその後は,だれが知っているのか? 

財政・武器支援がなければ,ウクライナが敗れて民主主義は危機に陥る? 笑わせる.正義の原理主義は最初から塹壕に入って現実を知るべきだったのだ.ベトナム,アフガニスタン,ノルド・ストリーム爆破,アメリカの国債の利払いの危機的な水準,西側対ロシアの砲弾の年間生産量,経済成長率の南北比較と制裁の失敗.これらの現実から目をそらしたまま,ロシアの国家資産を没収し,そのままウクライナ支援に投じてドルの暴落に拍車をかける,意味不明の自殺行為.

そのあとに言われるままについていくだけの従属国家もあったな.反抗によって死ぬか,従属によって恥辱の破滅に至るか,選択さえできないオコチャマを城主とする家臣の苦渋がよくわかる.書いていると止まらなくなる.


La Scala TVでCavalleria Rusticanaのストリーミング再生を購入.期待に胸が高まるが,あれぇ・・・サントゥッツァ役が別のソプラノに代わっている.どうやらunwellで代役らしい.夢ばかりみていると,歌手が人間であることさえ忘れてしまう.




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1年11ヶ月 [イヌ・散歩]

2024年3月24日(日)雨.

週末にかけて,露モスクワ郊外の大劇場でテロがあり,100人を超える死者がでた(現在も増加中).たまたま早朝に目が覚めたときにBBCのbreaking newsで知ったので,それ以来,睡眠不足になっている.これについては家族には書き送ったが,ここでまたふれる気はしない.我が国の外務省がテロ非難と弔意をあらわしたときに,ある露テレグラムチャンネルがすぐに反応したことが興味深かった.やはり,見ているのだ.


利益相反という概念の現実的な適用が,明明白白な状況でもわからないふり.そんな子供だましを国会でそのまま認めて,国民の健康被害には数字を無視して居眠りを装う.

主流メディアも沈黙,国会議員も,官僚も黙認.「愛する人のため」と自己犠牲を勧めて,それに従わないものを咎めたのは一体誰だれだったか,もう忘れたのか? 短期記憶しかない人間と報道のどこを信頼せよ言うのか? おれは馬鹿だが,こんなレベルも識別できないバカではない.



イギリスも酷いものだが,孤立無援で立ち上がった国会議員の言論を無視することしない.その点は立派だ(今後の議論の中身次第だが).




写真は語る,あるいは目は口よりも語るというべきか? バレるんだね,やっぱり.




昔の写真や動画をみていると,ずいぶんとこっちを見ていることに気づく.「なぜ,一緒に来ないのか?」「そこでカメラ(わかるはずもないが)を構えて何をしているのか?」いぶかしそうな表情をして,立ち止まってこちらをみている.またある時は,遠くから私をみつけて,笑いながら走り寄ってくる.

その嬉しそうな表情を見ていると,得ていたものと,失ったものの大きさに息が詰まる.大切にして慈しんだだけなのに,それを上回るものを返してくれた.何も期待しないでただ愛情を注いだだけだが,この世界に隠されている計り知れないGoodnessを,眼の前に出現させてくれた.

KogaBeach.jpg

世界は日々ホラー劇場だ
怒り,憎しみ,破壊,血,嘘,偽善,カネ,地位,不義の正当化,無関心
数年で潰え去る泡のような不毛のオンパレード

お前はいいときに死んだ
もうすぐドッグフードも入手困難になるだろう
ガソリンも高くなって遠出も難しくなる

デジタル動画の琥珀のなかでしばし眠れ
無限の大宇宙の何処かで お前の記憶はセキュアだ
そして再び夏の海辺の散歩を待て





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1年10ヶ月 [イヌ・散歩]

2024年2月25日(日)今日は久々に雨が降らず晴れたままである.ただ,また若干寒さが戻ってきた.

■真実によって始まる
早朝に目が覚めて,地政学ニュースを聴いていたつもりが再び寝てしまったらしい.ところが,いつの間にかYouTubeのチャンネルが自動で切り替わっていて,Julian Assangeの米国送還に反対する海外の人々の数ヶ月前の演説を映し出していた.

朧な意識のなかに,「平和は真実によって始まる」という女性の言葉が飛び込んできて,ハッと目が覚めた.つまり,戦いが嘘を契機として始まるように,平和を回復するためにはまず真実から始めなければならないということである.

代わる代わる演壇に人がたって,告発する.ある証人は,米司法省のGarland長官は,Assangeを独房に入れることにないといっているが,それは信用できないという.そして,米国の独房がどういうものかについて具体的に話し始めた.

■独房
28年アトランタの独房で過ごした男性の経験.その人は小柄だが,両手を伸ばせば両方の壁に手が届く広さの部屋で,天井も低い.備品はベッドだけで,スティール製の壁は白く塗られており,電気が常時ついている.時計もないので今何時かも,昼も夜もわからない.また,頻繁にウトウトしたが,5分寝たのか5時間だったのかわからない.4年経過したに過ぎないのに,自分では10年たったと思っていたという.この人は未だに独房にあるが,死ぬまで出られない.

25年独房で過ごした別の人によれば,そこは死より悪い場所であり,やがて肉体的な苦痛を感じるようになる.正気が内部から絞りだされて,坂を滑り落ちて狂気に転がり落ちていく.また,全身のあちこちから出血をみた人,精神が崩壊に向かってもとに戻れなくなったという別の囚人の経験も話していた.


Assangeは米国送還されれば,機密文書を公開して,イラクやアフガニスタンにおけるアメリカの戦争犯罪を暴露した罪に問われ,懲役175年を宣告されるだろうという.いつ独房に入れられるかわからない.

■メディアの暴露
アルジャジーラの報道は,このAssangeの送還とNavalnyの獄死をめぐる西側メディアの報道の偏りを鋭くついていた.Assangeは「西側メディアを暴露したことで名が知られるべきだ」という告発は重い:




■露資産のウクライナへの譲渡
一方,西側によって凍結された露資産を「盗んで」ウクライナに送るという案は,一時なりを潜めていたようにみえたが,話は進んでいたようである.新聞報道によれば,国際法学者10名が各国政府に書簡を送付したと述べている:

〜〜〜

日米欧の国際法学者ら10人が,経済制裁の一環で凍結されたロシア資産のウクライナ復興への活用について,「国際法上,合法だ」との見解をまとめたことが21日,分かった.

書簡は,ウクライナ侵攻により「ロシアは,国際法の最も根本的なルールに違反した」と強調.「国際法は,『対抗措置』を取ることを認めている」と指摘し,ロシア政府の資産をウクライナなどへの補償に利用できると結論づけた.

 具体的には,「国際メカニズム」を創設し,金融機関などが保管している凍結資産を移転.ウクライナなどからの補償請求を個別に審査した上で,分配する手法を挙げた.
    
共同通信(2024年2月22日配信)

〜〜〜

これは「凍結資産活用を後押ししそうだ」と記事の中で書かれている.

■「Navalny法」
後押ししているのは,西側法学者だけではない.ドイツの連邦議会外交政策委員会のノルベルト・レトゲン(Norbert Röttgen)委員長は,最近ロシア資産の没収を求め,そのための法律を 「Navalny法」 と呼ぶべきだと主張しているようである.彼が独連邦議会で述べた内容:

「西側諸国はロシアの国家資産3000億ドルを凍結した.この金はウクライナの防衛と復興のために没収されるべきだ.これは国際法上の複雑な問題だが,基本的な公平性の問題だ.私は,この没収を許可する法律をNavalnyの法律と呼ぶことを提案する」.




■ユーロ市場の崩壊
以下,仮称「Navalny法」とよぼう.Navalny法には,どのような困難,帰結・報復が予想されるか? 2024年2月中旬の報道では,以下のような例がある:

凍結されたロシア資産の主な保有者であるベルギーのユーロクリア(Euroclear)は,この資金を活用する計画に反対している.ユーロクリアは,ロシア中央銀行の凍結資産260億ドルのうち1910億ドルを保有している.

我々は,ロシア中央銀行が,すべてが差し押さえられ,ユーロクリアの義務が消滅したことを単純に受け入れるとは想像できない.

モストレイ(Mostrey)CEOは,同社に対する法的措置の可能性を警告し,ユーロクリア・システム,欧州資本市場,ユーロに対する信頼が損なわれないよう,「合理的かつ理性的な意志」が勝つことを望んでいる.


つまり,ユーロに対する信頼を根本から損ないかねないということである.ドルを武器化して失敗したことは敵のプーチンまで(タッカー・カールソンのインタビューで)言及した愚策だが,今度は欧州資本市場・ユーロも同じ轍を踏む可能性が高い.経済を損なったら,戦争などできない.


■ノルド・ストリーム破壊は誰がやったのか?
その前例があるではないか.今の独経済の空洞化や不況突入はなぜもたらされたのか? 最大の原因の一つは,エネルギー価格の高騰で,独の化学工業などが生産費の高騰に悩まされたからだ.そして,エネルギーコストの高騰を招いた主要な理由は,ロシアの安価な天然ガスがたとえばノルド・ストリーム経由で入らなくなったからである.では,ノルド・ストリームは誰が破壊したのか?

バイデン大統領は(V.ヌーランドも然り)記者会見で,ロシアがウクライナに侵攻した場合,「ノルド・ストリームはもはやない」と述べて会見場の記者たちを驚かせた.外国の資産がなくなるということの意味を問われて,彼は言葉を濁したがが,言わんとすることはやがて明らかになった.ノルド・ストリームは爆破されて利用でき「なくなった」.誰がやったのか?

結局,西側の調査は公表されず,ショルツ独首相も回答しない.実に不思議な現象だが,西側の主要メディアはこの重大事件を曖昧にして追求しない.

この一事をとってみても,西側報道の便宜主義が明らかで,彼らは自分たちの生活を破壊する巨像が部屋の中を徘徊しているのに,それを無視しているのである.どうして彼らの報道を信頼できようか? プロパガンダへの追随は,彼ら自身の存立を危うくしつつあることすらわからない.


ウンザリしてきたので,閑話休題.


この3連休は天気がイマイチでやっと晴れたと思って自転車で外に出ようとすると,雨が降りだす有様で,公園を歩く以外は遠出はしなかった.イヌが元気だった頃は,週末の連休はかならずといっていいほど海にでかけていたのに.

特に,福岡市東区の香椎浜から西戸崎の周辺は近くて(車で30分前後)しかも自然が豊かで,人も動物もリフレッシュする絶好の場所だった.それが今は失われた.というより,イヌが死んで2年近くたっても,そこにいけば以前のことがよみがえるので,脚が向かないといったほうが正確だろう.

bridge_Nov2016.png
福岡市東区にて

ただ,仮に戻ったとしても涙は出ないだろう.かつて遊んだ場所の記憶に伴って生じる空虚は,時間とともにエーテル化して重さを失っていく.直後の,くり貫かれたような無感覚(hollowing numb)は徐々に気化していった.すれ違うときのかすかな化粧の匂いが,いつまでもその場所に残っていることはないのに似ている.


一方,骨壷はいまでも触れることができるので,時間とともにイヌ自身を撫ぜているような気持ちが強くなる.骨壷の正面には,2つの小さな房が垂れていて,それはちょうど昔の大店の暖簾か,あるいはイスラエルの神殿の至聖所を隔てる幕のように,普段は中に収められた記憶を日常生活のゴタゴタから遠ざけ覆い隠している.だから撫でるときは,暖簾を分けるようにして記憶の中に入る.

そうすると,そこには別の世界が今も拡がっている.中に収めた頭部の骨のあたりを撫でながら,誰にもいえない事柄を話しかける.それは表現しようさえない感情の塊そのものであったりする.中から返事はない.ただ思いの波動が中に入っていくこと,そして黙って撫でられている姿が見える.

しかし,生きているときも返事などしなかった.それでも聴いているはわかっていた.なぜ? まったく予想もしていないときに,返事をしたからだ.散歩で小休止するとき,靴の上におしりを載せて背をむけて座った.手の甲を舐めた.顔を舐めにきた.座って笑った.すべてが聴いていることを証ししていた.

その記憶をたどっていると時間は消えて,深い充足が霞のように思い全体を覆う.だれにも話せない魂の底を知っているものがまだここにいるという安らぎが満ちる.

ひとりひとりが分離され,絶えず攻囲されている世界で,これ以上の幸せがあるだろうか? たとえ向かい来る矢は激しさを増しても,この世界に生み出されたことに感謝するのはそんなときである.身に余る光栄あるいは慰めという表現しかみあたらない.

損傷した老朽船でもドックに入れば,少しは見栄えが戻るだろう.かつての活力は消えても,たとえ見栄えだけだとしても,それが船に力を与えることは相違ない.そうしたドックのような魔法の箱を身近に持っているのは幸いである.




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那珂川 [イヌ・散歩]

2024年2月4日(日)今日は久々に天気が良かった.

娘を連れて福岡市の天神にいった.退院祝いとまた近々入院になるので,その合間にとおもって,アクロスから福岡県公会堂貴賓館をとおって,那珂川沿いをキャナルシティに一緒に歩いた(障害者なので,独りで遠方に外出はできない).GAPで買い物する.

昼間のせいもあるのだろうが,西中洲の川沿いは随分変わっていて,若い頃のごちゃごちゃと汚く(そこが魅力だった),そのまま地下に誘拐されそうに狭い淫靡な博多の水の町並みは面影だけになっていた.中国語が飛び交っているので,ますます知らない場所に来たような気になる.


途中,アクロスの向かいの天神中央公園を通った.かつて,ここでイヌを遊ばせたことがある.そのときは夜だった.狭い公園の隅々を嗅ぎ回ってあっという間に元の場所に戻る.ライトアップされた洒落たカフェの外を流れる色のついた水を二人で眺めていた.あれから随分時間がたった.

https://youtube.com/shorts/Vavku39AY-s?si=GbAMo-_IucsHhNXy



いまや西側でもっとも注目される政治家の1人はプーチンかもしれない.自国経済の低迷や政治的混乱は脇において,ロシア経済の将来がひどく気になるとみえる.



キャスターのAdrian Finighan氏もBBCよりAl Jazeeraの方がずっと似合う.

プーチンは複数の原子力砕氷船を建造して,シベリア沿岸北回り貿易ルートの年間利用を企図している: 「北洋航路(the Northern Sea Route)の全長にわたる貨物航行は,2024年から通年になる」(Alexander Novak, Deputy Prime Minister of the Russian Federation).

国も,経済も,そして人も,以前と同じところにはとどまっていない.一方,我が国はbackpedalしてはいないか?




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老人と犬 [イヌ・散歩]

2024年1月18日(木) 曇り時々雨.ここ数日,寒さがゆるんでエアコンなしで問題ない.

夕方,公園を散歩しているときに強めに降り出した.

winter2024.jpg

ピロティで雨宿りしていると,シーズーを連れた70代後半と思しき男性が同じ軒先に入ってきた.

雨の止むのを待っている間に,頭の白くなったその老人は白いタオルを取り出して,犬の濡れた頭を拭き始めた.ゴシゴシと,頭から胸,それから全身を立たせるように持ち上げてお腹のあたりも拭く.シーズーは静かにされるままになっている.普段から大切にしている様子がうかがえる.

雨脚は弱まらない.しばらく待っていたが諦めたのか,老人は犬を繋ぎ止めて車に歩いていった.近くに止めたブルーの軽自動車に半身をいれて,ゴソゴソ車内整理をしてから,シーズーを迎えに来た.小柄な老男性と小型犬は車のなかにスッポリ隠れて見えなくなって,ゆっくりと駐車場から出ていった.


このふたりはどこに帰るのだろう.どうしてだか,男性は独り暮らしのように見えた.そんな雰囲気がした.1人と1匹は小さな部屋でそれぞれ夕食の準備をして,黙って食べるだろう.それから?

どちらかが先に死ぬだろう.犬が先であれば,犬の行き場の心配はない.しかし老人は死に等しい打撃を受けるだろう.人が先に死ねば,犬はどうするのか?



まだ降り止まない雨のなか自転車をこぎながら,イヌが死んだ日のことを思い出していた.ポーチでヨロヨロ歩こうとしても倒れるので,抱き上げると,突然2度血を吐いた.エレベーターの前のコンクリートが赤黒く染まった.動転して,信じられない.

それから病院に連れていった.吐き気止めの点滴.診察台の上で微動だにしない.楽にさせることだけを考えた.

連れ戻って傍につき,ほとんどずっと抱いていた.翌日,ときどき熱にうかされるように痙攣して,もうながくないことを教えてくれた.腕の中で話しかけると頭を振って応えてくれた.最期に,大きく伸びをするように痩せた身体を反って,死んだ.

死に至るまで看ることができて,本当に辛く,また幸いだった.あの老人と犬にも,同じことを願わずにはおれない.



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1年9ヶ月 [イヌ・散歩]

2024年1月16日(火)曇り.

朝起きてぼーっとしてると,イラク領内の米軍施設に対するイラン革命防衛隊による弾道ミサイル攻撃のニュースが入る.いよいよきたか,という気持ち.


エルビルのクルド人情報筋によると攻撃されたのは以下:

1.エルビル空港
2.エルビルのアメリカ領事館、
3.[シオニストの]ビジネスマンの家、
4.ハリール米軍基地

今後はどうなるか,想像したくもない.

続報によると,「イランはさらに,イラクのクルディスタン地方にあるシオニスト政権(モサド)の主要スパイ本部のひとつも標的にしていると付け加えた」が,「攻撃は米軍基地の近くであったが,米国は標的ではなかった」(Redacted)ということである.

情報が錯綜している.米軍基地および米領事館の被害は誤報かもしれない.

〜〜〜

このところ,にわかには信じられないニュースがたくさんあって,毎晩なかなか寝付けない日が続いている.とくに,今年のWEFのテーマの一つになっている‘Disease X’については呆れて書く気もしない.正気なのか?








ますます世界が狂気の沼に沈んでいくときに,思い出すたびに輝きを放つのは死んだイヌの記憶である.一般に,時間がたつにつれて,過去はますます背景に退き,それについて話す機会が少なくなればなるほど,記憶も薄れる.

たとえば,Andreiの死後,MariaとNatashaはかれについて話すことを避けるようになり,そのために彼を忘れ始める:

'As before, they still never spoke of him, so as not to violate with words, as it seemed to them, that lofty feeling that was in him, and this silence about him had the effect that little by little, without believing it, they began to forget him.'(vol. IV, Part 4, III; p. 1081)

話さない意図は,大切な思いを壊さないためであったとはいえ,ここを読んで悲しみを感じない読者はいないだろう.

同じように,書かないでいると消えていくものをとどめておくことはできない.しかし,なにを書くのか? あの「気高い感情」についてかくしかない.


イヌと飼う前,自らを顧みて人並みにはまともな人間だろう,とおもっていた.しかし,イヌと暮らすようになって以前の視野が分解し,世界の見方にもう一つの次元が加わって再構成された.それはペットを飼っている,したがって家族がひとり増えたという環境の変化では捉えられない深みである.まともなはずの人間から,社会性を失った単なるヒトに変わった.

またそのことによって,この世界は本来自分の属すべき世界ではなかった,という確信がうまれた.そして,子供の頃からの疎外感がどこから来たのかを初めて悟った.ここはヒトにとっての異国であり,この世界の秩序が犬を排除するように,ヒトも排除することを理解した.'In this world, I am an animal.'

その理解を促進したものはなにか? 言葉がない,という制約である.

2018年1月20日(13歳),筑紫野市の塔原の池の周囲を歩いていたとき,狭い野原の小道ですれ違う人を避けようとして,(片手でカメラを持っていたゆえに)長いリード操作がうまくいかず,それがイヌに絡まってしまった.痛かったらしく,2度キャンと鳴いた.「ごめんな」といった.そのとき撮った動画をみると,こちらを見上げてこんな表情をしている:


20thJan2018.png

以来ずっと,この微妙な柔らかい表情が何だったのかを考え続けている.それが伝えるのはある「気高い感情」で,イヌが残してくれた大切な遺産である.








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1年8ヶ月 [イヌ・散歩]

2023年12月21日(木)曇り.朝から今年一番の寒さで,寝床のある北向き位置する部屋はfreezingで,ベッドも冷凍庫の如し.今年初めての暖房を入れる(北国の人に笑われそうだが).

世界情勢は凶兆続出.中東の危機の深化(バブアルマンデブ海峡周辺に集結した原子力空母アイゼンハワー打撃軍を中心とする他国籍軍とイエメン・フーシ派の間の有り得べき戦闘)は,我が国の経済にエネルギー危機(1973年のオイルショック)の再来をもたらす可能性がある.

また,米国の2024年選挙は一体どうなるのか? すでに民主主義国とは思えないアメリカ合衆国は遠からず'united' statesではなくなるのかもしれない.欧州の混迷もなにがなんだかわからない点では,合衆国に劣らない.ウクライナ紛争の今後の展開について西側の意図と目論見が,プーチンの最近のスピーチの内容とあまりにもかけ離れている.こんな状態で,和平交渉とはなにをいみするのか? 非現実的な空想が,到達可能な将来として語られていて,笑いたくなる.

我が国についても,政治の混乱は今に始まったことではないが,国の将来と我々の福祉に直結するより重要な問題から目をそらさせ,それを隠すためにわざとやっているのではないかという気さえする.報道に関しても同様だ.別の大切な問題がたくさんあるでしょうが,と言いたい.


真面目に考えていると正気が怪しくなってくるので,別のことで精神の平衡をたもたなければならない.



朝,電車を待っているとき,よくプラットホームの端まであるく.そこでは遮蔽物が途切れていて日差しが直接プラットホームのアスファルトを照らして暖かい.そして,なにより大野城の山並みが遠望できることがある.

霧に霞んでいる日など,黒っぽい山肌が白い蔭に包まれて,見ているといまでもイヌがそこをあるいているような気がしてくる.中腹に,湧き水が岩肌を勢い良く伝わり落ちる場所があって,暑い日はそこでよく水を掬ってのませた.


16世紀末の岩屋城の戦いで,少数の兵力で立て籠もった高橋紹運を,島津の大軍によく抗戦させた理由の1つが,ここ大野城の湧き水であると読んだ.イヌに水を飲ませていると,時を隔てた戦国の生死と今が,同じ水で繋がれているような連鎖を意識した.

山を下ると,麓に水城がある.白村江の敗戦後,大宰府の防衛のために築かれた大堤で,いまはその一部しか残っていないが,堤を覆って茂る木々の緑は豊かで,夏の散歩のよい日除けであった.

そこから程ない距離に,堤を切るように御笠川が流れている.その水辺に腰をおろして,しばらく休む.これから先のこと,やがて散歩が独りになってしまったときのこと,そんなどうしようもないことが浮かんだ.

7世紀には御笠川は川幅もずっと広く,遠く筑紫平野に流れ込む豊かな河だっただろう.一時の休憩から立ち上がって川沿いにたどった帰り道も,いまは木々に覆われてしまって失われた.電車の中からそこがみえると,我が国の誕生期から青春の動乱期をたどって歩いていたような気さえしてくる.

その歴史の散歩もいまは消えた.これらか100年後も大野城はそのままだろうが,我々がそこを歩いていたことを知るものはだれもいない.なんと儚いことだろう.



惜しいことに『戦争と平和』Part III, vol.III, XXXII(p.923)まできた.とうとうモスクワは燃えはじめた.どうすんだよ,物語はもうすぐ終わりだ.

少なくとも自分にとって,これは「読む」ことはできない小説だ.物語に引きずり込まれ,そのなかを生きるしかない.何回目であっても,最初読んだときと全く同じだ.


ただ,読むたびに異なる箇所に目が開かれる.アンドレイはやっとナターシャに対する自分の過酷さに目覚める.そうだよ,気持ちはわかるが,君はちょっとキツイ男だよ:

'And he understood her feeling, her suffering, shame, repentance. For the first time now he understood all the cruelty of his refusal, saw the cruelty of this break with her.'

ナターシャの個性のなかでは,たしかに奔放な外に向かった開いた天然の魅力が優勢だが,それでいて決然とした現実性をもっている.戦闘で傷ついた兵士の看病にそれがみえる:

'the doctor had to admit that he had not expected from a young lady either such firmness or such skill in looking after a wounded man.'


ふたたび重症を負ったアンドレイが,せん妄状態と現実認識の間を行き来する部分の記述を作者はどうやって書くことができたのか? ガンの術後に熱がなかなか下がらず,夢と現実の中間状態をさまよったときの記憶がアリアリと蘇った.






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1年半 [イヌ・散歩]

2023年10月21日(土) 晴れ.ややさむくなった気がする.

今日は夕方,月隈に行った.月隈は私鉄バスの終点になっている山の裾野に開けた住宅街で,山の散歩の行き帰りに家々の間を縫うようにしてよく歩いた.自転車をおしながら昔のコースをたどる.

今でも犬連れの散歩を楽しむ人々がおおく,途中6匹の犬にあった.柴犬も2匹.猫にリードつけて歩いている高齢者の女性もいた.


山の奥に入っていくと,ゴルフ場,猿が出没するペット墓地,ビルマの丘とかかれた(おそらくは南方の戦没者の)墓地,自衛隊の射撃練習場などがあり,上がれば上がるほどこの世離れしてくる散歩コースだった.ここを歩くとき私のイヌはあまり笑わなかった.自分もなんとなく薄気味悪く感じたことが何度かある.

ただ周囲の緑とその間を流れる水は心地よく,それを見たくて時々きた.下りて住宅街に入ると,庭園風につくった池のある公園があって,そこの芝に伏せて休んだ.

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今日しばらくぶりにその公園にいってみると,木々も池もすっかり秋の風情でだれもいない.見上げると,空は雲ひとつない薄いブルーの清澄で,冷たくなってきた風がくすんだ緑の梢を揺らしている.野鳥のペアが2点の薄い墨となって彼方を横切っていく.


毎日イヌと歩いていた頃,心は満ちていて,四季の繊細と変化がよく見えた.今,半分裂けた空洞には,155ミリ砲弾の炸裂音,吹きとばされた子供の血,くくられたbody bagの白い土嚢のような堆積,正義と復讐を叫ぶデモ,外国語のあらゆる嘘が割り込んできて,注目を競っている.それらすべては,煽りかき立てて,自然をみる目を遮断する.

骨壷を撫でで話しかけると,声がきこえる.かつての経験の重く低い音で近づいてきて,平安と微かな希望のドップラー効果を残して,再び消えていく.同じ死からよみがえってきて,私の目を自然にむけて開く.















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1年5ヶ月 [イヌ・散歩]

2023年9月24日(日)晴れ.随分と涼しくなった.

昨日の夕方,自転車にのって水城にいった.本来は山に行きたかったのだが,買ったばかりの変速機つきのスポーツ自電車でトライしても急な坂道はもう上れない.諦めて,混雑する道路を避けて,裏の細道をこいでいくうちに水城が見えてきた.

水城の杜もすっかり秋の気配だ.涼しい風が心地よい.ジャーマンシェバードが1頭,車で来たらしい飼い主の女性と戯れていた.ここは死んだ柴犬を連れて何度も来たところで,周囲を一緒に歩いたときのことが思い出された.

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それから自然と近くの御笠川の川辺に足がむいた.川沿いの芝のキレイな場所に出ると,私のイヌは自分から伏せをして動かなかった.そこで,一緒にすわって夕暮れ時の川面を眺めるのが散歩のルーチンだった.

餌を探す白いサギが何かの音に驚いて飛び立つ.大きなフナの群れ,棟数をしめす数字だけが目立つ対岸の集合団地の列,そこから出てきて向かいの川辺を三々五々散歩している高齢者.そうした光景をすわってずっと見ていた.

しかしいま,ともにくつろいだ場所は,どことなく寂しげな夏草が繁茂して水面の眺めを遮断していた.かつてここまで伸び放題になったことはなかった気がする.風景が来なくなった昔の馴染みを待ち続けるはずもない.自転車を止めて周囲を見回しても,なんだお前か,今ごろ一人で何しに来た,とそっけない.もうすっかり別の場所になってしまった.


伏せし跡 剥げ窪みたる 夏芝に
幻見たり 戻り来るらむ


帰宅して,ウクライナ情勢,カナダとインドの関係緊張,中露外相会談,今後の米市場見通し,世界の金融機関のデリバティブ取引の(帳簿外)取引残高と中国のGOLD保有高についての読み,かつ聴いて,起ころうとしていることについて再びアレコレとかんがえる.

〜〜〜

“Who's that?” asked Boris. “That is one of the most remarkable, and for me most unpleasant, of men. That is the minister of foreign affairs, Prince Adam Czartoryski. It's these people,” Bolkonsky said with a sigh which he could not suppress, as they were leaving the palace, “it's these people who decide the fates of nations.”―War and Peace

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まず戦争に巻き込まれないようにすること,つぎにエネルギーや食料をふくめ自国民の日常生活を維持するために最低必要な物資を備えること,この2点に全力を傾注してほしい.






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