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In the process of dying [映画]

2023年9月17日(日)曇り.東京から4日間戻っていた3女が花の都にもどっていって寂しくなった.

ここ数日,激しいめまい(それに伴う吐き気)に襲われて,周囲の上下左右が回転して立っていることができない状態が頻発している.死んだイヌの前庭疾患がこんな具合だった.どこかがおかしくなっている.7年ぶりにふたたび死を意識する.


アメリカの銀行連鎖倒産第2波が秒読みにはいった.一方,Shanghai Gold Exchangeで金価格が高騰している.ほぼ無敵状態の米ドルと米実質金利上昇と明らかに逆行し,金価格が落ちない.

BRICSはやはりドル1強支配を徐々に,それから急速に終わらせるだろう.我がyenはどうか? もう考える気がしないので,書く気もない.


「日本はいま滅びつつあるんですよ,皆さん」.視聴傾向にに合わせてランダムに並んだ(らしい)YouTube動画の中で,なにげなくクリックした「馬渕睦夫チャンネル」の動画の最初の方で,馬渕睦夫氏(元駐ウクライナ兼モルドバ大使)はそう語った.


しばらくその言葉を考えていて,イーロン・マスクの最近のXへのポストが連想された:

'I am a citizen of the United States and have only that passport. No matter what happens, I will fight for and die in America.

The United States Congress has not declared war on Russia. If anyone is treasonous, it is those who call me such.

Please tell them that very clearly.'


彼はUSAの何をdefendしたいのか? 同様に一つのパスポートしか持たず,そのパスポートの国で死ぬだろうことは間違いないが,わたしはどの国のためにも他のどの人々とも戦うことはしない.ただ,この国の滅びつつあるもののを(すくなくとも自分の中では)死守する責任を自覚する.

滅びつつあるものとは,『残菊物語』(1939年)のような美しい映画を生み出した日本の文化である.このような映画が世界の他のどこにあるだろうか? 「良うござんした」というお徳の最期の一言は,すべての映画の中でもっとも好きなセリフである.そこに込められた意味こそ,滅びつつあるものである.

日本人がこの言葉の意味を理解できなくなってしまったら,この国はもう存在する意味がないかもしれない.しかし,もはや見ることさえなくなってしまった映画をどうやって理解するのだろうか? 魂のない映画は,技法であって映画ではない.




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元禄忠臣蔵 [映画]

2023年2月10日(金) 晴れ.

夕方,久々に餃子の王将の餃子持ち帰って,仕事帰りに寄った天体と食べる.店内で餃子が焼き上がるのを待っている間,レジで注文し支払いをする人々を観察するのは楽しい.一人暮らしの日常生活の様子が,ごま塩頭の後ろ姿に透けてみえたりする.


『元禄忠臣蔵』(溝口健二)を見た.なんと討ち入り場面のない品の良い忠臣蔵で,死ぬことを知っていた日本がそこに甦る.

カット毎に所作一つ一つを省略せずに撮るので,ゆっくりとした時間の流れに沿って,人物の想いの微妙な揺れや屈折の翳が,見るものの内側にはっきりと軌跡を描いていく.

彼らの内面に入り込み同化するために必要十分なテンポは何か,それをこの映画は知っている.だから彼の作品は,自らの想いの底を探ることを我々に強いる.そして最後に,一つの経験を生きた,という充足を抱かせる.日本映画において,これ以上の監督を私は知らない.





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